前回の記事では、「ただ漠然とお金持ちになりたい」という目標がいかに危険かについてお話ししました。目標がないと、足りなすぎたり多すぎたりして、結果的に大切な「時間」をロスしてしまうんですよね。
では、「十分なお金が貯まった」とは、一体どうやって判断すればいいのでしょうか?
今日はその目安について考えてみたいのですが、本題に入る前に、少しだけ私の育児の経験談に付き合っていただけませんか?実はそこに、お金の価値を考える大きなヒントが隠されているのです。
息をしているだけで褒められたあの頃

赤ちゃんって、本当にすごいですよね。
生まれたばかりの頃は、ミルクをごくごく飲んだだけで「えらいね!」と褒められます。少し大きくなって、クレヨンでぐにゃぐにゃとした線を描いた日には、周りの大人はもう大騒ぎです。
でも、これが小学生や中学生になったらどうでしょう。
ご飯を残さず食べたからといって、毎回大げさに褒められることはありません。ノートに文字を書いたとしても、「それが普通だよね」と気に留められることもなくなっていきます。
これって、子どもの価値が下がったのでしょうか?
もちろん、そんなことはありませんよね。変わったのは子どもの価値ではなく、周りの**「期待値」**です。年齢が上がるにつれて「できて当然」のハードルが上がり、ある行動に対する「相対的な価値」が変わってしまったのです。
実はこれと同じことが、私たちの「お金」にも起きているとしたら、どう思いますか?
銀行に置いたままの現金も、実は「価値が下がって」いる?

「貯金箱や銀行に100万円を入れておけば、ずっと100万円の価値がある」と考えますよね。でも実は、少しずつその価値は目減りしています。
それが**「インフレ(インフレーション)」**です。
昔は100円で買えていた自動販売機のジュースが、今は130円や150円を出さないと買えなくなりましたよね。これはジュースの中身が高級になったのではなく、「お金の価値が下がった(物価が上がった)」からです。
赤ちゃんの頃は「歩いただけで大絶賛」だったのが、10歳になると「歩けて当然」になるように。
昔は「100円でジュースが買えた」のに、今は「100円じゃ足りないのが当然」になっている。
つまり、現金だけをじっと持っているのは、時間の経過とともに勝手に価値が下がっていく現象と戦い続けることなのです。では、価値が変動し続ける世界で、私たちは「いくらあれば安心」と言えるのでしょうか?
逆算で考える「0.01%の法則」

ここでひとつの面白い考え方をご紹介します。『wealth rudder』という本などでも触れられている「0.01%の法則」です。
これは、「自分の総資産の0.01%の金額であれば、使っても心理的な痛みを全く感じない(気兼ねなく使える)」という心のバロメーターです。
この法則、逆から計算してみると、自分にとっての「十分な資産額」を測る最高の定規になります。
計算式はとてもシンプル。「毎日気兼ねなく使いたい金額 × 10,000」です。
いくつか例を出してみましょう。
• 毎日コーラ(150円)を値段を気にせず飲みたい場合
150円 × 10,000 = 150万円
• 毎日カフェのコーヒー(400円)をためらわずに買いたい場合
400円 × 10,000 = 400万円
• 毎日少し贅沢なランチ(1,500円)を楽しみたい場合
1,500円 × 10,000 = 1,500万円
いかがですか?意外と現実的な数字だと感じる方もいるかもしれませんね。
ちなみに、私が目指しているFIRE(経済的自立と早期リタイア)の基準で計算してみましょう。私の月の生活費は約21万円。つまり1日あたり約7,000円です。これを毎日、資産が減る恐怖を感じることなく使うには……。
• 毎日7,000円を使って生活(FIRE)したい場合
7,000円 × 10,000 = 7,000万円
そう、私にとっての「十分な資産のゴール」は7,000万円ということになります。
遠回りも失敗も、すべては「自分を知るためのヒント」

「7,000万円なんて途方もない!」と思うかもしれません。あるいは、「コーラの150万円ならいけそう」と思った方もいるでしょう。
大切なのは、金額の大小ではありません。「自分は毎日、何にいくら使えるようになれば幸せなのか」という自分だけのゴールを具体的に設定することです。
インフレでお金の価値は少しずつ下がっていきます。人間の行動に対する評価のハードルも上がっていきます。絶対的なものなんて、この世にはそう多くありません。
だからこそ、「漠然とお金持ちになりたい」という幻想を手放し、まずは「毎日コーラを笑って買える150万」を目指してみる。そこに向かう途中で、投資で少し失敗したり、無駄遣いをして遠回りしたりすることもあるでしょう。予想通りにいかなくて、少し沈んだ気持ちになることもあるかもしれません。
でも、理科の実験と同じで、最初からきれいな結果が出なくてもいいのではないでしょうか。
その失敗や遠回りは決して無駄ではなく、あなたが「自分にとって心地よいお金と時間のバランス」を見つけるための、大切な**「自分を知るためのヒント(実験の記録)」**になるはずです。
限りあるあなたの「時間」という一番の資産を、どう使っていきたいですか?
まずは今日、あなたにとっての「0.01%」がいくらなのか、計算してみることから始めてみませんか。



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