皆さんは、普段当たり前のように使っている言葉が、海外で全く通じずに焦った経験はありませんか?
「えっ、これって英語じゃなかったの!?」と冷や汗をかくあの感覚、すごくわかりますよね。
実は、日常の中には英語のフリをして隠れている「別の国の言葉」がたくさんあります。
例えば、遠足で背負う**「リュックサック」や、スキー場の「ゲレンデ」、登山で岩に打ち込む「ハーケン」。そして、美味しい「バウムクーヘン」**。これらはすべて、ドイツ語から来ている言葉です。
そして驚くべきことに、私たちの体を構成したり、理科の実験で大活躍するあの「元素」たちの中にも、英語圏では全く通じない名前の持ち主がいるのです。
「えっ、通じないの…?」ナトリウムとカリウムの落とし穴

食塩の中に含まれる**「ナトリウム」や、バナナや海藻に多く含まれる「カリウム」**。
理科の授業でもおなじみのこの2つの元素ですが、アメリカやイギリスに行って「ナトリウム!」と言っても、相手は首を傾げるだけではないでしょうか。
実は、英語圏では全く違う名前で呼ばれています。
• ナトリウム → 英語では 「Sodium(ソジウム)」
• カリウム → 英語では 「Potassium(ポタシウム)」
どうでしょうか。響きからして、全くの別物ですよね。
「一生懸命覚えたのに、世界で通じないなんて少し沈んだ気持ちになる……」と思ってしまうかもしれません。
では、なぜ日本と英語圏で、こんなにも名前がすれ違ってしまったのでしょうか?
日本の理科が歩んだ「歴史のバケツリレー」

日本で「ナトリウム」「カリウム」と呼ばれている理由は、先ほどの「リュックサック」や「バウムクーヘン」と同じです。そう、ドイツ語の読み方がそのまま定着したからなのです。
日本の歴史を少し振り返ってみましょう。
明治時代、日本が近代的な国を作ろうとしたとき、医学や化学などの最先端の学問を「ドイツ」から一生懸命学びました。(病院で使われる「カルテ」という言葉もドイツ語ですよね)。
その時、ドイツ語の教科書に書かれていた「Natrium(ナトリウム)」「Kalium(カリウム)」という発音をそのまま日本語として取り入れたため、現在でも日本ではドイツ語読みがスタンダードになっているのです。
教科書に載っている「ラテン語由来」の真実

ここで、理科が好きな人の中には「あれ? 教科書には『ラテン語』が語源って書いてあった気がするけど……?」と気づいた方がいるかもしれません。その記憶、大正解です。
実は、ここに科学の歴史の面白いドラマが隠されています。
そもそも、ナトリウムやカリウムを発見したのはイギリス人の科学者でした。彼は当然、英語で「Sodium(ソジウム)」と名付けました。
しかしその後、「世界共通の短いマーク(元素記号)を決めよう!」となったとき、ヨーロッパの学者たちはこう考えたのです。
「英語より、昔から学問の言葉として世界中の学者が使ってきた**『ラテン語』をベースにした方が、みんな納得する**んじゃないかな?」
そこで、アラビア語などの古い言葉をラテン語風にアレンジして「Natrium(Na)」「Kalium(K)」という世界共通の記号が作られました。
ドイツはそれをそのまま名前として使い、日本はドイツからそれを学んだ、というわけです。
発見した人の言葉(英語)ではなく、世界共通の記号のための言葉(ラテン語)が、ドイツを経由して日本にやってきた。まるで長い長い「歴史のバケツリレー」のようですね。
おわりに

いかがでしたでしょうか。
「せっかく覚えたのに英語で通じないなんて、日本の理科は遅れているのかな?」と不安になることはありません。
言葉の違いや、一見すると少し遠回りに思える歴史も、**日本の先人たちが世界から一生懸命知識を吸収しようと奮闘した、かけがえのないデータ(プロセス)**なのです。
「Na」なのに「ソジウム」と読むなんて理不尽だ!と思うかもしれませんが、その背景にある歴史のドラマを知ると、少しだけ元素たちが愛おしく思えてきませんか?
パズルのピースである元素たちは、ただそこにあるだけでなく、私たち人間の歴史や文化と深く結びついています。これからも、そんな化学の裏側に隠された物語を一緒に楽しんでいきましょう。


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